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恋とは何か?愛とは何か?何が違うのか?(万葉集より)

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次のような歌詞があります。

「”愛”という字は真心(まごころ)で ”恋”という字にゃ下心(したごころ) 	」

曲名:「SEA SIDE WOMAN BLUES」歌手名:サザンオールスターズ 作詞者名:桑田佳祐

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これは「愛」「恋」本来の意味としては、必ずしも正しくありません。
辞典や万葉集より、「愛」「恋」の本来意味と変わりゆく意味をみていきましょう。

辞典にみる「愛」と「恋」(広辞苑(第五版)から引用)

辞典では「愛」という広い定義の中には、「愛情」「恋」が含まれいます。
これには、「愛」に関する歴史的な背景があります(下記参照)。

恋の意味

  • 一緒に生活できない人や亡くなった人に強くひかれて、切なく思うこと、また、そのこころ。特に男女間の思慕の情。恋愛。「恋に身を焼く」
    • 万葉集(20)「常陸指し 行かむ雁もが 吾が恋を 記して付けて 妹に知らせむ」
  • 植物や土地などに寄せる思慕の情
    • 万葉集(10)「桜花(さくらばな)、時は過ぎねど、見る人の、恋(こ)ふる盛(さか)りと、今し散るらむ」

愛の意味

  • 親兄弟のいつくしみ合う心。広く、人間や生物への思いやり
    • 万葉集五「愛は子に過ぎたりといふこと無し」。「愛情・博愛・人類愛」
  • 男女間の、相手を慕う情。恋。「恋愛・求愛」
  • かわいがること。大切にすること。
    • 伽、七草草子「己より幼きをばいとほしみ、愛をなし」。「愛護・寵愛」
  • このむこと。めでること
    • 醒睡笑「慈照院殿、愛 に思し召さるる壺あり」。「愛好・愛唱」
  • 愛敬(あい きよう)。愛想(あいそ)
    • 好色二代男「まねけばうなづく、笑へば愛をなし」
  • おしむこと。「愛惜・割愛」
  • 〔仏〕愛欲。愛着あいじやく。渇愛。強い欲望
    • 今昔物語集二「その形、端正なるを見て、忽ちに―の心をおこして妻めとせんと思ひて」
  • キリスト教で、神が、自らを犠牲にして、人間をあまねく限りなくいつくしむこと。→アガペー。

そもそもの意味(万葉集より)

「love」の意味は江戸時代末期ごろからのものであり、本来「恋」「愛」は次のような意味でした。

  • 「愛」・・・・悲哀、いとしい、懐古、孤独、孤愁
  • 「恋」・・・・ひとりで誰かを恋しく思い、切ない気持ち、片思い

愛の意味 = いとしい

万葉集には「かなし」という言葉が114語あり、

  • 愛(かな)し=身にしみてしみじみと愛(いと)しい、懐古 、孤独、孤愁

と言った意味に使われています。

「かなし」には「胸がつまるような感じ、感情が痛切に迫って、心が強く打たれるさまを表す」が
含まれており、「愛」が受け入れてもらえない時、人は深く悲しみ、辛い心にさいなまれます。

「愛し」が「悲しみ」に変わり、
「かなし」という言葉が、「悲し」「哀し」と転化していきました。
これにより「かなし」に悲しいという用法が生まれました。

近代に入り「愛」の意味に、英語の「Love」やフランス語の「amour」などの異なる概念が同時に流れ込み、
現在の多用な用法が作られました。
 

  • キリスト教の愛の概念
  • ギリシア的な愛の概念
  • ロマン主義小説の恋愛至上主義での愛の概念

なお、今の「恋愛」という言葉は幕末までありません。

恋の意味 = 古非、古比、孤悲

我が国最古の詩集、万葉集には「恋」という言葉に、「古非」や「古比」に交じって「孤悲」とあてた歌があります。
「孤」はひとりということ。「悲」は悲しいということ。
つまり「孤悲」とは「ひとり悲しい心」を意味し、この表記は万葉集に29例あります。

通い婚が通常だったこの時代は恋とは待つことでした。これも日本人の持つ美学のひとつです。

「古代の恋(孤悲)」 引田部 赤猪子(ひけたべのあかいこ)

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5世紀、若建命(若かりし第21代雄略天皇)が三輪川のほとりで衣を洗っている16歳の童女に出会った。

名を問えば「引田部(ひけたべ)の赤猪子(あかいこ)」と童女は答えた。
天皇は童女に結婚の約束をしただけで、その日は宮にお帰りになった。
ところが天皇は、そのことをうっかり忘れてしまわれた。

そして1年、2年 とうとう80年間の月日が過ぎてしまった。
赤猪子は「もはやお召しの希望もなくなったが、せめて私の志だけだけでも」と天皇のもとを訪れた。

天皇はたいそう驚き、そして赤猪子に2つの歌を与えた。

  • 御諸(みもろ)の いつ橿(かし)がもと。いつ橿がもと。ゆゆしきかも。橿原童女(をとめ)
  • 引田の 若栗栖原(わかくるすはら)。若くへに 率寝(ゐね)てましもの。老いにけるかも

赤猪子はこれを聞いて涙を流し、赤染めの袖を濡らした。そして2つの歌を詠んで返した。

  • 御諸(みもろ)に 築(つ)くや玉垣 築き余し 誰(た)にかも依らむ 神の宮人(古事記)
  • 日下江(くさかえ)の 入江の蓮(はちす) 花蓮 身の盛り人 羨(とも)しきろかも(古事記)

天皇は赤猪子に多くのものを与えて帰した。

参考文献

新日本風土記ミニ「恋の舞台をたどる 大和路の恋」(2011年2月19日(土)総合/デジタル総合放送)

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