狼男とゾンビ伝説が生まれた理由
中世の怪物伝説が生み出された影には、当時の「宗教」や「生活形態」などが影響しています。
狼男伝説
満月の夜、突然発作と共に体中に野獣のような体毛や鋭い牙が生え、次々に人々の命を奪うと言われる狼男。
狼男伝説はフランスを中心とするヨーロッパ諸国が発祥の地である。16~17世紀にかけて書かれた「巫覡論(ふげきろん)」などの書物の中には、狼男が実在したという記録も残されている。
実際、狼男裁判で処刑された狼男は数100人を超す。
古くからヨーロッパの農村地帯では、自然に強いライ麦の栽培が行われおり、農村地帯の人々は、このライ麦から作られたパンを主食にしていた。
実は、ライ麦などイネ科の植物がかかる病気の中に、子房内に黒紫色の菌核を形成させる「麦角病」という植物病がある。
その「麦角病」の菌核には、「麦角アルカロイド」という毒素が多量に含まれており、視覚や聴覚などの異常感覚、さらには不安や恐怖、精神的な錯乱などを引き起こす事が知られている。
このような精神錯乱に陥った姿を、農民達に狼男として見られた可能性が考えられる。
実際、「ライ麦」栽培地域と「狼男伝説」の存在した地域は一致する。
その後、広大な地域の基本食品として、ライ麦に取って代わりジャガイモが普及してくると、この狼男伝説は減衰の意図を辿っていくのである・・・・
※ 狂犬病も有力な説(光や水に過敏に反応するため)とされています。
参考
「特命リサーチ200X年」2000年2月20日
「ビートたけしの!こんなはずでは!!」2004年3月13日
ゾンビ伝説
ハイチ共和国などを中心に信仰されている「ヴードゥー教」という多神宗教がある。
「ヴードゥー教」は霊的な観念を扱っているだけではなく、道徳や哲学、そして独自の法体系といったものを備えている。また医療や占いも兼ね、薬草に強い。
この法体系の中で「ゾンビ」が存在し、これは罪人に(裁判所を通さず)罪を償わさせる手段である。以下の方法で行われた。
- 1. 神官は、あらかじめ犠牲者に「秘薬」を混ぜて飲ませ、犠牲者を仮死状態に する。
- 2. その後、通常どおり葬儀を行い(葬儀方法は土葬)社会的には死亡させる。
- 3. 神官は人目をしのび「仮死状態」の犠牲者を掘り起こし、顔に液体を塗り仮死状態を解く。
- 4. 犠牲者は「生ける屍」とされ、神官の隠れ家などで労働を強制される。(1~2日間という長い間無呼吸状態だったため脳の前頭葉は死んでいる。)
これこそがゾンビの正体である。
この「秘薬」は「ゾンビ・パウダー」と呼ばれ、トカゲ、カエル、ねずみ、クモ、ふぐ、人骨、薬草、その他いろいろな成分でできている。
ふぐの毒(テトロドトキシン)は運動障害、アトピン・スコポラミン(薬草に含まれる)などで犠牲者を意識・記憶障害に陥らせる。
その中で、最も注目すべき成分は、薬草の中に「ダチューラ(チョウセンアサガオの一種)が含まれている点である。「ダチューラ」は「アルガロイド毒」が含まれており、これを体内にとりこめば、体が痙攣し全身麻痺に陥る。
また、「仮死状態」を解くには「カラバル豆」を利用した薬品を顔に塗る。この豆には「フィゾスチグミン」が含まれており、停止していた脳の知識を回復させる効果をもつ。
ハイチ共和国で、今ではブードゥ教は正式な宗教として認められ、結婚式など人々の生活に取り入れられている。ただし、ゾンビ・パウダー製造やゾンビづくりは法律で禁止されてもいる。
※ ただし「秘薬」だけではゾンビにならないようです。「蛇と虹―ゾンビの謎に挑む」草思社より
参考
「ビートたけしの!こんなはずでは!!」2004年3月13日
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