過去帳から先祖を調べる

先祖調査のまとめサイト等では「先祖調査は除籍謄本と過去帳が重要」と書かれた記事をみかけます。

過去帳には死因や身分、生前の事跡などが詳細に記述されていることもあり、個人情報保護という視点から今では原則閲覧を禁止となっています。

「過去帳」とは何か?

過去帳(かこちょう)とは、故人の戒名や俗名、死亡年月日、享年などが書かれている帳簿のことです。

江戸時代には寺請制度により民衆は寺の檀家になる事が義務付けられていました。

このため、お寺が現在の戸籍にあたる台帳を作り役所のような役目を担っていました。

お寺には過去帳というものがあります。

過去帳には次の2種類があります。

  • 在家が持つ過去帳
  • お寺が保存管理する過去帳

過去帳はいつから存在するのか?

お寺によっては戦国時代からの過去帳が存在しているケースもあります。

しかし、ほとんどのお寺で過去帳を付け始めたのは江戸時代前半の寛永年間(1624年~1643年)以降からです。

島原の乱(1637年)以降、徳川幕府のキリスト教弾圧が厳しくなりました。

以降、日本中の家々はキリスト教徒でない証として必ずどこかの壇家になうことが義務付けられていきました。

このため、保存状態がよく、かつ火災、戦災等を免れ過去帳がきちんと現存していれば、江戸時代の前期までは調べられるということです。

年数にして現在から数えて400年弱といったところです。

ただし、実際にはそれほど古い過去帳が残っているお寺は稀で、だいたいは江戸時代中や明治時代に家事で消失し、そこまで古くはたどれないことの方が多いのが実情です。

在家が持つ過去帳

在家が持つ過去帳は本家が管理している事が多いようです。仏壇の引き出しの中に管理していることが多いようです。

なお、在家が持つ過去帳には続柄が書かれていない場合があります。墓石と照らしあわせて確認してみましょう。

お寺が保存管理する過去帳

お寺が保存管理する過去帳には、各家の先祖代々の記録が記述されています。

undefined 仏事に関わらない依頼は受け付けないと言われました。

例えば浄土真宗では次のような事項が周知されています。

2. 閲覧禁止(公開の禁止)

過去帳等に記載されている内容は、その個人の基本的人権に関わる個人情報であり、公開は厳禁とします。

門徒からの問い合わせの場合、書面にてその目的・対象等の明示があったとき、その門徒の直接の先祖に関する部分の抜き書き等に限定して開示できるものとします。

なお、どのような場合にも、「過去帳又はこれに類する帳簿の取扱基準」(以下「取扱基準」)の趣旨に反すると思われる場合は、取扱責任者は、「取扱基準」により開示を拒否しなければなりません。

【引用】浄土真宗 本願寺

お寺の過去帳の取得方法

住職様との縁は地元の方々や本家にとっては非常に大事です。

本家や父母の方と相談して依頼するか決定されることをお勧めします。

また、住職様からの返答がどうであれ、お礼にお布施を包むなどの礼儀はするようにしてください。

  • 1. 寺の過去帳の前に、墓石の調査もして先祖の情報(俗名、法名、没年、享年、屋号等)を用意します。
  • 2. 寺に過去帳を見せてもらいに行きます。
    • お寺に行く時間は、昼過ぎがいいでしょう。(午前中や夕方は何かと忙しいものです)
    • 過去帳を見せてもらって、書き写すとなると、結構時間がかかります。更に和尚さんと話をすると、2,3時間はすぐに経ちます。
  • 1. まず、お志を包んでいきましょう。(1万円くらい)
  • 2. 「忙しいので見せられない」「プライバシーの問題がある」と言われたら、「過去帳を作成して下さい」とお願いしましょう。その際に謝礼(3~5万円)をお渡しましょう。謝礼を出せばこちらの誠意も伝わります。依頼したあとは、ゆっくり待ちましょう。
  • 3. 過去帳は住職が貴重な時間を割いて作って下さったものです、過去帳を受け取った・受け取れなかったとしても必ず感謝の手紙を書きましょう。

お寺にある過去帳は、そのお寺に弔われている方がまとめて記載されており、家ごとに分けられているものではないため自家のご先祖様だけを探し出そうとしてもなかなか難しいです。

江戸期の農工商には苗字がないので下の名前だけしか書かれておらず、膨大な記録の中から自分のご先祖だけを探し出すというのは、非常に困難な作業となります。

このように日付の中から、私たちの先祖だけをピックアップするのですから、相当時間のかかる作業です。

そのため、過去帳を依頼したら1,2ヶ月は待つくらいの余裕が必要です。待つ間に手紙を書いて、近況報告をしましょう。

作って頂いた過去帳が、余り記載のないものでも(明治以後の記載しかなく、全部知っていたとしても)不満に思ってはいけません。

江戸時代は電気が無かったため、蝋燭ろうそくの失火で火事になることがよくありました(多くのお寺では江戸時代に1回は火災に遭っていると考えて下さい。)

そうなると、過去帳も無くなっていますので、火災以降の過去帳しか残っていません。

お手紙の書き方

拝啓

突然お便りさせていただく失礼をお許し下さい。
私は○○○に住んでおります鈴木太郎と申します。

実は、このたび我が家の家系図を作成し、永く子孫に残していきたいと考えております。
戸籍や除籍簿・墓石で直系を調べてみたところ、私の直系の名前は下記であることが分かりました。

  鈴木左衛門(法名:釋智善、~ 1762年5月11日没)
   ↓
  鈴木保吉(法名:?、1797年10月21日没)
   ↓
  鈴木太平次(法名:?、~ 1859年7月12日没)
   ↓
  鈴木彌四郎(法名:釋玄達、~ 1887年7月22日没)
   ↓
  鈴木松次郎(法名:釋道雲、~ 1949年8月22日没)
   ↓
  鈴木良吉(法名:釋永観、~ 1980年7月21日没)
   ↓
  鈴木保男(~ 2009年2月10日没)
   ↓
  太郎(私です)

※ 以上は、戸籍・除籍簿、墓石、古文書からの情報です。

せっかくですので、何とか除籍簿で判明した弥四郎より上の先祖名も明らかにして感謝の意を捧げ、末永く当家の情報として伝えていきたいと考えております。

最近ではすっかり足が遠のいてしまっていて申し訳ありません。

そこで、もしよろしければ貴寺にある過去帳よりご住職のほうで当家の先祖名を拾い出していただくことはできないものかと思い、勝手ながらこのような手紙をしたためました次第です。

大上屋保兵衛(法名:釋智善、~ 1762年5月11日没)
大上屋保兵衛(法名:?、~ ?)
麓屋太平次(法名:?、~ 1859年7月12日没)

私の身分証明と、これまで取得してまいりました戸籍・除籍簿の写しを同封させていただきました。

よろしくご検討くださいますよう、まずは書面にてお伺い申し上げます。

敬具

<自分の名前>
<住所>
<電話番号>

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