苗字、名前、屋号、家紋、地域など先祖を調査すると多くの発見があります。
現代の感覚からすると、屋号というのは商人だけが用いるもののような気がしてしまいますが、そうではありません。
江戸時代、武士以外は苗字を名乗れないこともあり、農民の間でも必ず屋号というものを持っていました。
苗字を公文書で名乗ることは許されませんでした。
過去帳などにはこの屋号が書かれていることがあります。
屋号は自然発生的に成立したものが多く、また様々なものがあり、地域によっても特色が見られ、その由来も一概には種分けできません。
ですが、一般的には次のように分類できます。
江戸時代には現金収入を得るため農業のかたわら、あるいは農閑期を利用して、農閑余業といわれた様々な仕事に携わりました。
それらの職業は質屋、屋根屋、佐官屋、紺屋、桶屋、鍛冶屋、縁日商などで、職業の名称がそのまま屋号となっています。
農業を主産業とする農村が日本では大半を占めていたので、地元の農地や地形に関する物が多いです。
農漁村では、家の地位・所在地・特徴などを屋号としています。
付け方 | 例 |
---|---|
地形に由来するもの | みどりや、刈畑、井川尻、竹屋、のうて、石垣、土蔵、大杉、カド、タブチ(水田の縁)、長江、向かえ、近道 |
位置関係によるもの | 下平田、上平田、前田、下原、上原、後谷、大上、大下(家が固まっている地区で一番川下)、しもて、日田屋、先馬屋(さきまえ)、下(分家だから) |
地名に由来によるもの | 追分、笹合、矢崎、備前、京橋、日本橋、神田、亀戸、小岩 |
屋敷の特徴によるもの | 長屋・永屋(長屋門がある)、長畠(屋敷の畑の形)、蔵屋敷(蔵がある)、腰巻(屋敷の腰廻りに土手がある) |
先祖名 | 仙助、市兵衛、定屋(定さんの家)、利兵衛(利兵衛のところの権左衛門) |
身分に関するもの | しちけんや、いざらば(いざるば) |
その他 | 川平(かわひら)、矢ヶ谷(やがたん)、せのぶ、こぶけ、むかわ |
地名、立地条件、位置関係を由来とする屋号はもっとも多く、多くのパターンがあります。
このため村の歴史を内包したものでもあるため、民俗学上の史料として参考にされることもあります。
また、これらは明治以降姓として受け継がれた例が多いです。
商人など都市部では、語尾に「屋」を付すもので、江戸期に発生した屋号に多いです。
付け方 | 例 |
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国名・地名+屋による | 河内屋、大阪屋、加賀屋、越後屋、上州屋、紀伊国屋、伊勢屋、備前屋、大和屋、松坂屋、高島屋、長崎屋 |
職業によるもの | 質屋、屋根屋、佐官屋、紺屋、桶屋、鍛冶屋、縁日商、鍛冶屋、左官屋、下駄屋、大工屋、提灯屋、棒屋、床屋、髪結い、小間物屋 |
店号によるもの | よろずや、あさもとや |
衣に関するもの | 古着屋、撚り屋、呉服屋、綿屋、糸屋 |
食に関するもの | うどん屋、酒屋、豆腐屋、糀屋、クルマ(水車)屋、箸屋、付木屋、菓子屋、せんべい屋、そうめん屋、餅屋、醤油屋 |
住に関するもの | 炭屋、屋根屋、篭屋、桶屋、大工、箱屋、傘屋、鍛冶屋・筆屋・畳屋 |
創業者の姓・名による | 神戸屋、鈴乃屋、西松屋、明屋(はるや)、大森屋、岡田屋 |
神仏名などによる | 大黒屋、朝日屋、白木屋、福砂屋 |
「家」以外に語尾に付す文字としてよく使われるものには、次のようなものもあります。
屋号の成立上、前述してきたいずれに分類できるか、または由来のよくわからないものもいくつかあります。
江戸時代は苗字を公称できなかったので屋号が発達しました。
屋号を苗字代わりにしていました。
現在でも、田舎にいけば苗字ではなく、屋号で会話が行われている土地も多いです。
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